記事4「日独仏がAI研究強化に合意」

【日欧・研究】〔在日フランス大使館〕2019. 4.20 公開記事より抜粋

 

フランス国立研究機構(ANR)*ドイツ研究振興協会(DFG)*日本の科学技術振興機構(JST)*は4月16日、日独仏3カ国の人工知能(AI)分野の優れた研究プロジェクトの公募に向けて、東京都内で基本合意書(LOI)に署名した。

 

昨年11月21日と22日に、第1回「人工知能に関する日独仏合同シンポジウム」が東京都内で開催され、専門家が350人以上集まったことが、今回の基本合意書の締結につながった。

 

日独仏3カ国の研究支援機関(JST 、DFG 、ANR)が共同出資するプロジェクト公募は、今年6月から開始される予定。今回の基本合意書の締結がフランスのAIに関する国家計画を後押しし、AIとその応用(健康、環境、モビリティなど)をめぐる学術交流を促進することが見込まれる。真の3国間協力を確保するため、各国から少なくとも1組以上のパートナーが研究プロジェクトに参加することが応募条件となる。』

 

ニュースソース:
在日フランス大使館

 

用語

フランス国立研究機構(Agence. Nationale de la Recherche:ANR)

2005 年 3 月に公益団体(2007年1月に公的法人化)として設立された公的研究資金配分機関。高等教育・研究省の管轄下に、自然科学・工学から人文・社会科学までの全分野に対して競争的資金を配分する国立研究機構(ANR)がある。ANRでは、研究者の好奇心に基づいた研究およびミッションに基づいた研究に資金を配分している。

ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft: DFG)

1951年設立。ドイツの大学や研究機関で行われる基礎研究に対して研究助成をする政府機関である。文系を含めたすべての研究を対象に研究助成金を競争的資金として支給する。研究論文などの捏造、改ざん、盗用といった研究倫理の対処にも対処している。

日本の科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency:JST)

1996年設立。科学技術振興を目的として設立された文部科学省所管の国立研究開発法人。文部科学省の競争的資金の配分機関の1つ。

 

ヨーロッパの対アメリカAI研究体制

 

AIは今後の社会の在り方を大きく変え、AI技術によって世界のパワーバランスが決定づけられるという考え方がある。各国がAI技術者の獲得合戦を繰り広げる中で、現在世界のAI研究の最先端を行くのはアメリカと中国といわれており、ヨーロッパでは優秀なAI研究者がアメリカ企業に続々と引き抜かれている。この状況に危機感を抱いたヨーロッパの研究者グループが各国政府に働きかけ、ヨーロッパにおけるAI研究体制の立て直しを図っている。

 

ヨーロッパの研究者12人による書簡「Initiative to establish a European Lab for Learning & Intelligent Systems」(学習および知能システムに関するヨーロッパ研究所設立へのイニシアチブ)には、AIに対する投資がアメリカと中国に集中している現状を打破するために、ヨーロッパ各国共同の大きなAI研究機関を設立する必要性が唱えられ、研究機関「ELLIS(European Lab for Learning & Intelligent Systems:学習および知能システムに関するヨーロッパ研究所)」を立ち上げて、ヨーロッパでのAI研究体制を強化し、人材流出を防ぐべきだとする意見がまとめられている。

 

このような試みは、既にヨーロッパで実施されている。例えばスイスとフランスの国境にある素粒子物理学の研究所、CERN(欧州原子核研究機構)は、第二次世界大戦終結後にヨーロッパからアメリカに優秀な物理学研究者が流出することを防ぐことが設立目的の一つであった。

参考記事:

Scientists plan huge European AI hub to compete with US(2018.4.23) | The Guardian

 

EU国家は日本を含めた協定を締結することで、日本の技術を導入しようとする目的がある。フランスはドイツの技術力に匹敵するほどの自国のテクノロジーのレベルの底上げを狙っていると思われる。

 

日仏プロジェクト公募に関して

開始時期等の情報は在日フランス大使館科学技術部発行ニュースレターにて発表される予定。

詳細:http://events.science-japon.org/inscriptionjp/

 

(参考)戦略的研究推進事業CRESTにおけるフランスANRとの日仏共同提案募集案内(2019/2/18)

2019年度のCRESTの提案募集では、以下の2研究領域で通常の研究提案に加えて、日仏共同研究グループによる共同研究提案を募集する。

・人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開(CREST)

・Society5.0を支える革新的コンピューティング技術(CREST)

詳細:https://www.jst.go.jp/kisoken/boshuu/teian/top/info/info_01.html