記事5「2017オープンアクセス調査報告書」

【欧州・研究】〔ヨーロッパ大学協会〕公開記事より抜粋

ヨーロッパ大学協会(EUA)*は「オープンアクセス調査報告書2017-2018 EUA Open Access Survey Results」にて、ヨーロッパ36カ国の321施設の2017年から2018年の学術出版物へのオープンアクセス(OA)*、研究データ管理、および研究データの公開性等の調査結果を発表した。

 

それによると、研究データ管理ポリシーを立てている機関はわずか20%であり、そのうち実際に動かしているのは13%のみ。また70~80%の機関が、研究データ管理および研究データのOA化には、スキルのあるスタッフ、政策および法的手段、そして資金や技術リソースの追加が必要だと回答した。

38%の大学が、明確な研究データ管理と研究データガイドラインへのOAが必要だと答えている。インフラ開発、意識の向上、研究者へのインセンティブ(評価)も、研究データ管理と研究データへのOAの進展に必要である。

 

今回の報告書には、研究評価に関する質問が初めて含まれた。

 

ニュースソース:
「2017-2018 EUA Open Access Survey Results」 ― EUA 2019/04/04

 

用語

ヨーロッパ大学協会(European University Association、EUA

ヨーロッパ46カ国の850以上の高等教育機関が参加する非営利団体。2001年創設、本部はブリュッセル、ベルギー。フォーラムの開催などにより、情報交換を推進。

ウェブサイト www.eua.be

 

OA(オープンアクセス、英: open access

主に学術情報の提供に関して使われる言葉で、広義には学術情報を、狭義には査読つき学術雑誌に掲載された論文を、インターネットを通じて誰もが無料で閲覧可能な状態に置くことを指す。自由な再利用を認めることも定義の一つに含まれることが多い。研究成果が広く世界に公開され、再利用が可能になることは、新たな研究を生み、社会へ大きな利益をもたらすと考えられている。1990年代の学術雑誌価格高騰に対抗して学問の自由な共有を目指す動きが現れ、方向づけられた理念。

著者にとってのオープンアクセスのメリット

・アップと同時に世界中に発信可能

・論文の利用が増え、研究者同士のコミュニケーションが生まれる

・研究成果を社会に還元できる

 

研究機関にとってのオープンアクセスのメリット

・大学図書館や研究機関が抱える、学術雑誌の価格高騰に伴う予算不足問題の一つの解決策

 

新たなOAプロジェクト

スイスの欧州原子核研究機構(CERN)が中心となり、高エネルギー物理学(High Energy Physics: HEP)分野の学術雑誌論文のオープンアクセス化を目指す新たな国際連携プロジェクト、SCOAP3(スコープスリー、Sponsoring Consortium for Open Access Publishing in Particle Physics Physics)。

これまで大学図書館等が支払っていた「購読料」を対象雑誌の「出版費」に振替えること で、それらの学術雑誌の論文を世界中の誰もが無料で読むことができるオープンアクセス化を目指す。

2006年に開始し、日本を含む世界44ヶ国、3000以上の図書館が参加している。

2018年から、アメリカ物理学会(APS)刊行の「Physical Review C」、「Physical Review D」、「Physical Review Letters」が対象誌に加わったことで、全世界のHEP分野論文の約90%がオープンアクセスとなった。

 

SCOAP3について

https://www.nii.ac.jp/sparc/scoap3/index.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cicsj/33/3/33_74/_pdf

 

日本のオープンアクセス化促進

2016年7月に日本の機関リポジトリの振興・相互支援を目的とした「オープンアクセスリポジト推進協会」が、国交私立大学図書館協会と国立情報学研究所の協力で設立された。2017年の国別機関リポジトリ数の割合は、1位のアメリカ合衆国、2位の英国に次いで、日本は世界第3位であり、全体の 6.4%を占めている。4位はドイツ、5位はスペイン。

オープンアクセスリポジトリ推進協会