英国のHard Brexitに備えて教育と研究に準備を
【EU・教育研究】〔ドイツ連邦教育研究省BMBFの記事の抜粋〕
『2019年2月14日、英国議会下院における今後のEU離脱手続きに関する決定は、今後のより不透明な状況をもたらした。「合意なき離脱」、いわゆるHard Brexitは未だ回避されていない。主な目的は、移行期間を含む離脱協定に基づいた、英国の秩序ある離脱の維持である。 3月29日の離脱日は近づき、残された時間は少なくなってきている。
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)大臣は、「誰も英国の合意なき離脱を望んでいないが、ドイツは緊急事態にも備えている。特に教育、科学、研究は、国境を越えた協力のもとに成り立っている。」と述べた。ドイツは英国と多様な面での協力があり、英国の秩序ある離脱を求めているが、同時に、他のEU加盟国および欧州委員会と共に、「合意なき離脱」の可能性に向けた慎重な準備を進めている。
エラスムス・プラス(Erasmus+)プログラム*についての大臣のコメント。
「英国は、ドイツからの学生および職業研修生に最も人気のあるErasmus+の留学先であり、欧州委員会がプログラムの特定の分野に対する一時的な資金援助を提案したのは重要である。財政的な問題のために学業が中断されてはならない。たとえ「合意なき離脱」となった場合でも、移行解決策に関する欧州委員会の提案は、EU枠組プログラム「Horizon 2020」*と「Erasmus+」について、英国のパートナー機関と始めたプロジェクトが一定期間継続されることを保証する。」
ニュースソース:
ドイツ連邦教育研究省
Harter Brexit erfordert Vorsorge für Bildung und Forschung(2019.2.15)
用語
Erasmus+(エラスムス・プラス)
Erasmus +(Eurpean Regio Action Scheme for the Mobility of University Students)は、EUの「Europe2020」戦略の一環となる教育・訓練・青少年・スポーツのための助成プログラム。
次の3つに大別される。
1:移動性。学習のための個人留学(学生、教員)
2:イノベーションおよび優良な実践例の情報交換に関しての協力(高等教育機関、職業教育機関、企業、地方自治体)
3:政策改革の支援(EU加盟国間の交流・協力のため実施されるイニシアティブを支援)
期間は2014年-2020年の7年間。予算は総額147億ユーロ(約2兆円)。のべ200万人以上の大学生が留学奨学金を受けられる計算。日本人学生が申請可能なプログラムも存在する。
詳細:http://ec.europa.eu/programmes/erasmus-plus/index_en.htm
Horizon 2020(ホライズン2020)
Horizon 2020は欧州の研究開発とイノベーションを促進するための世界最大のオープンな研究助成プログラム。2014年-2020年の7年間にわたり、「卓越した科学」「産業リーダーシップ」「社会的課題への取り組み」の3項目を中心に構成される。EUの「Europe2020」戦略における、欧州の世界競争力を確保する指針「イノベーション連合」を実施するための手段で、産業と学術研究の結びつきを狙いとし、研究成果をイノベーション・経済成長・雇用につなげるのが目的。
予算は総額約770億ユーロ(1ユーロ=140円換算で約10兆7,800億円)。先行の第七次研究枠組(FP7)の約 1.5 倍の公的資金が提供される。
優れた研究の市場化により、民間企業と公的機関が連携しやすくなることで、イノベーションへの障害が取り除かれ、欧州が飛躍的な科学成果を上げ、革新的成果をもたらすことを目標としている。
詳細:https://ec.europa.eu/programmes/horizon2020/en/what-horizon-2020
日本の研究者・機関が Horizon 2020の研究資金を得ることは可能か
世界に開かれたプログラムと言われているものの、原則的には不可能。ただ下記のように日本機関の参画がプロジェクト成立に必須であったり、欧州の利益になる場合、助成を受けられる可能性がある。
- 日本・EU間で結ばれた科学技術に関する二極間協定により資金が提供される場合。
- 応募要領に、日本の機関が資金を得る事が可能だと明記されている場合。
- 日本の機関の参加により、「卓越した能力、経験」「研究インフラの利用」「特定の地理的環境の提供」「データの提供」の寄与がある場合。
現在104に上る日本の機関が88のプロジェクトに参加(2014年から2018年の総計)。大学は東京大学、京都大学、九州大学、大阪大学、京都産業大学、埼玉大学など。本学でも3月に開催された米国グラント応募支援ワークショップにて紹介され、ウプサラ大学とはHorizon2020応募も視野に入れた具体的な国際共同研究に向けての作業が進みつつある。
研究者の場合は、EU 加盟国もしくは準加盟国で最低 5 年間継続的にフルタイムの研究活動をしているか(Marie Curie Actionsプログラム)、EU 加盟国か関連国での研究活動を企図している場合(欧州研究会議研究資金プログラム)に該当する。
日本の連絡窓口 (NCP)は日欧産業協力センター。