記事11「G20各国の研究実績レポート発表」

〔クラリベイト・アナリティクスWebサイト〕公開記事より抜粋

 

Web of Science Group*のInstitute for Scientific Information(ISI)は、G20各国の研究業績を可視的に比較し検証する新たなレポートを発表した。

「The Annual G20 Scorecard – Research Performance 2019(G20年次スコアカード-2019年研究業績)」レポート*は、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコ、英国、米国の研究業績の概要が文書およびグラフや図表で説明されている。また、G20参加国のうちEUを除く19カ国全体において以下の特徴が示されている:

・世界人口の65%を占めている
・世界のGDPのうち80%以上を産出している
・世界の研究開発費の92%を支出している
・世界全体の研究者の87%を雇用している
・Web of Scienceに収録されている論文の70%を占めている(直近3年間では500万報の論文を発表)

データは各国の研究の現状を示すものであり、政策的にも関心が高い情報に焦点を当てている。影響力のある研究に寄与する主な要素が国ごとにまとめられており、以下の情報が記載されている:

・国際的関与:G20が行う研究のうち、約半数が各国間の連携によるもので、最も影響力が大きい研究が含まれる
・より広範な経済の中での相対的な研究資金:EUは2020年までにGDPの最低3%を研究資金に充てることを目指している
・研究者のジェンダーバランス:ユネスコの報告によると、世界の研究者のうち30%が女性
・論文へのオープンアクセス:EUは公的資金による研究論文を直ちにアクセス可能にする「プランS」を推進しており、2018年にG20で行われた研究の3分の1がOAとして公表された
・研究発表と被引用度のまとめと、その指標の科学・人文科学の主要研究分野別の詳細

G20各国の論文数の推移とGDPの推移が非常によく似た傾向を示している。アメリカは1980年から一貫して首位、中国は2番手、日本は90年代後半から一貫して横ばいを続けている。また、2018年の論文数、GDPの順位を見ると、多少の差異は見られるものの、上位国の顔ぶれや、インドやブラジルのような新興国の位置づけも類似している。

日本の論文数およびGDPの増加率・成長率の推移にも類似点が見受けられる。高度成長期を経た80年代、日本の経済成長は5%前後で推移し、90年代に入ると低い水準の低成長時代へと推移し、現在に至るまで続いている。一方、論文数の増加率を見ると、80年代は同様に5%を超える高い水準で成長していたが、90年代後半から低下し、2000年代にはGDPと同じく低成長時代に入っている。論文数がGDPに少し遅れて低成長時代に入っているのが特徴的。

Web of Science 事業部シニア・マネージャー中村優文氏のコメント「昨今、日本の科学研究の相対的な低迷がいたるところで取り上げられ、その大きな要因として大学の運営の非効率性などが挙げられています。しかし、上記の経済指標の推移との類似性を見ると、科学のパフォーマンスは必ずしも学術界だけの問題ではなく、経済を含めた日本の社会全体の構造的な要因もはらんでいるのではないかとの仮説が立てられます。仮説の検証および要因の究明は、より詳細な分析が必要ですが、このデータが日本の科学・研究力の向上の本質的な議論の一助になれば幸いです。」

ニュースソース:

クラリベイト・アナリティクス

“Web of Science Group、G20参加国の研究実績を検証する新レポートを発表~主要経済国の研究業績データが示す世界的イノベーションの推進~”(2018.6.28)

https://clarivate.jp/news-release/2019/G20

 

「The Annual G20 Scorecard – Research Performance 2019(G20年次スコアカード-2019年研究業績)」レポート

The Annual G20 Scorecard – Research Performance 2019

 

用語

Web of Science Group

イノベーションの加速に向けて信頼性のある知見や分析を提供する世界的リーディングカンパニーであるクラリベイト・アナリティクス(NYSE: CCC; CCC.WS)の学術情報事業部門。

 

追記

G20の研究力

G20は、EUを除く世界の19の主要経済国で、世界の国内総生産(GDP)の80%以上、世界の人口の3分の2を占める。2019年6月28-29日にG20サミットが大阪で開催された。

このレポートはランキングではなく、19カ国のG20諸国のプロファイルを作成するための研究労働力と研究協力、研究成果、品質、および競争力に注目した内容。

G20の19カ国の過去3年間にWeb of Scienceの研究出版物および引用索引に掲載された記事およびレビューは500万件を超え、世界全体の70%以上を占めている。

 

G20年次スコアカードに記載された日本に関するレポート

「高水準のGERD / GDP(3.2%)を有する十分に確立された研究経済ながら、引用インパクトは比較的小さい。 Impact Profileは、国際協力を通してパフォーマンスがG20平均を上回ると示しているが、それでも比較的低く、過去10年間で総生産量の30%を占める。生産性は平均を大きく下回っており、女性は研究者人口のわずか16%に留まっている。」