記事7「オープンアクセスポリシー導入後調査」

【イギリス・研究】〔2019年ACM/IEEEデジタルライブラリー合同会議〕公開記事より抜粋

 

2019年4月17日、英国Open Univeristyの機関リポジトリにおいて、オープンアクセス(OA)*義務化方針が、研究成果がリポジトリで公開されるまでの期間に与える影響を分析した論文“ Do Authors Deposit on Time? Tracking Open Access Policy Compliance”が公開された。
著者は同大学のDrahomira Herrmannova氏、Nancy Pontika氏、Petr Knothの3名。同論文は2019年6月開催のJCDL(デジタルライブラリー合同会議)で採択された。

 

Herrmannova氏らは、5年間に渡って世界中のリポジトリに収録された80万本以上の論文の大規模な分析を行い、

  1. 数千ものリポジトリ全体で出版日からリポジトリ収録日までの期間のタイムラグを効果的に追跡できるか
  2. リポジトリ公開までの締切りがOA方針に盛り込まれた場合、研究成果の受け入れから公開までの期間は短縮されるか

を調査した。

 

このうちb)について、英国ではリポジトリ公開までの締切りを設けたREF* 2021 OAポリシーを定めた後、公開までの時間差は大幅に減少した。ポリシーの導入が、他国と比較して英国の即時OAへの動きを加速させた可能性があり、期限設定つきのOAポリシーの有効性が示された。

 

ニュースソース:
Herrmannova, Drahomira; Pontika, Nancy and Knoth, Petr. ”Do Authors Deposit on Time? Tracking Open Access Policy Compliance.” In: 2019 ACM/IEEE Joint Conference on Digital Libraries, 2-6 Jun 2019, Urbana-Champaign, IL.

 

参考

英国・Jisc、論文投稿先の雑誌がResearch Excellence FrameworkのOAポリシーに準拠しているかを確認できる“Sherpa REF”のBETA版を公開(2016/3/24)

http://current.ndl.go.jp/node/31098

 

英国・Research England(RE)、高等教育機関による助成機関のOAポリシー遵守状況や課題等をまとめた報告書を公開(2018/6/19)

http://current.ndl.go.jp/node/36190

 

用語

OA(オープンアクセス、英: open access

主に学術情報の提供に関して使われる言葉で、広義には学術情報を、狭義には査読つき学術雑誌に掲載された論文を、インターネットを通じて誰もが無料で閲覧可能な状態に置くことを指す。また、自由な再利用を認めることも定義の一つに含まれることが多い。1990年代に、大手出版社による学術雑誌市場の寡占と価格高騰が続いており、これに対抗して学問の自由な共有を目指す動きが現れ、方向づけられた理念および運動。

 

REF(Research Excellence Framework

英国で現在実施されている大学研究評価制度。高等教育機関の研究評価を公的に実施する枠組み。

 

REF 2021 OAポリシー

2016年4月1日以降に発表が認められた、特定の研究成果に適用されるオープンアクセスポリシー。

・ISSNとともに学術誌に掲載された記事や、フル会議論文等の研究成果は、承認後3か月以内に適切なオープンアクセスリポジトリに保管する必要がある。抄録、ポスター、プレゼンテーション、講演等は省かれる。

・REFの適格性を確保するために、研究活動に携わるスタッフと学生は、ジャーナル記事や会議議事録の発表を受け入れた直後に、原稿をwww.openaccess.cam.ac.ukにアップロードする必要がある。

原稿は、査読後、出版者による組版またはコピー編集の前の、著者が作成した最終版。

・ほとんどの研究成果がポリシーの対象となる。承認後3か月以内に寄託されず、例外対象ではない研究成果はREF 2021では使用できない。研究成果が他の機関リポジトリに寄託される場合、REFの適格性は満たされないこととなる。

REF 2021 Open Access Policies

 

追記:日本のオープンアクセス方針の策定機関

 

研究者が作成した学術論文等の研究成果を、所属機関の学術情報リポジトリ等によりインターネット上で原則公開することを定めたオープンアクセス方針は各研究機関で構築されつつある。オープンアクセスリポジトリ推進協会によると、2019年3月22日.現在、以下の25の研究機関がオープンアクセス方針・実施要領を策定している。

大阪市立大学・大阪府立大学・岡山大学・沖縄科学技術大学院大学・金沢大学・京都大学・九州大学・神戸大学・国際日本文化研究センター・島根大学・情報・システム研究機構国立極地研究所・千葉大学・筑波大学・電気通信大学・東京外国語大学・東京歯科大学・東北大学・徳島大学・名古屋工業大学・名古屋大学・一橋大学・広島大学・北海道大学・北陸先端科学技術大学院大学・横浜国立大学

オープンアクセス方針・実施要領 リンク集– JPCOAR

 

同協会ではオープンアクセス方針策定ガイドも出している。

オープンアクセス方針策定ガイド– JPCOAR