記事17「がん治療へのAI活用プロジェクト」

【ドイツ・研究】〔科学技術振興機構 デイリーウォッチャー〕2020年4月22公開

 

2020年3月5日、ドイツのカルリチェク連邦教育研究省大臣はがん治療に人口知能(AI)を活用する新たなAI研究プロジェクトを発表した。同プロジェクトはゲッティンゲン大学付属病院およびシーメンス・ヘルシニアーズ社(Siemens Healthineers)* によって進められ、BMBFが助成する。

 

大臣「AIは既に医学分野における診断の向上に大きく寄与している。がんは、多くの研究プロジェクトで取り上げられる医学におけるAI応用が期待される分野であり、AIの活用によるがんの診断法や治療法の改善チャンスを、研究者が利用出来るように支援していく。BMBFは既に、医学におけるAI活用と取り組む60以上のプロジェクトに9,000万ユーロを投資している。

 

Cancer Scoutプロジェクトは、AIによる生検(デジタル・バイオプシー)が目標。中核となるのはがん細胞のプレスクリーニングで、AIによって正確なターゲットを定めてがん患者を治療できる。BMBFは同プロジェクトを1,000万ユーロで助成しており、アカデミアと産業界の連携を示す好例である」。

 

シーメンス・ヘルシニアーズ社「この研究プロジェクトががん診断をより精密にし、改善するための臨床判断のサポートに寄与することを期待している。我々の課題はAIを活用し、がん治療で重要な分子的変化を予知できるため、臨床的、遺伝子的、プロテオーム的データに基づいて、人工神経ネットワーク(artificial neural Network)を治療で使えるようにトレーニングすること」

 

およそ1,000万ユーロで助成されるCancer Scout共同研究プロジェクトの主目標はAIの研究であり、AIによって「デジタル・バイオプシー」が、がん細胞内の分子変化を識別できるようにするもの。これによってがんはこれまでより遙かに短時間で目標を絞った治療が出来る可能性が高まる。

 

背景

ドイツでは毎年約50万人が悪性のがんに罹患している。

 

ニュースソース:

Karliczek: Künstliche Intelligenz für Krebsbehandlung nutzen(Bundesministerium für Bildung und Forschung,2020/3/5)

カルリチェク大臣:癌治療に人工知能を使用する

https://www.bmbf.de/de/karliczek-kuenstliche-intelligenz-fuer-krebsbehandlung-nutzen-11047.html

 

用語

 

ゲッティンゲン大学(The University of Gottingen 略称:GAU

正式名称はゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン。ドイツのニーダーザクセン州ゲッティンゲンに位置する、ドイツに9つあるエクセレントセンターの1つに掲げられる名門国立大学。1737年に設立。研究主導の教育を推進し、法学、哲学、数学、物理学において伝統的に実績を有する。ノーベル賞受賞者を45名輩出している(ドイツ最大)。

https://www.uni-goettingen.de/en/1.html

 

シーメンス・ヘルシニアーズ社(Siemens Healthineers

ドイツ総合電機大手シーメンスの医療機器部門子会社。2016年にシーメンス ヘルスケアがブランド再構築を行い新社名に変わった。本社所在地はバイエルン州エアランゲン。電力ガスなどを含めた主要8部門でシーメンス社の最大の業績を上げている。

https://www.siemens-healthineers.com/